DynaFlash: 1,000fps・3ms遅延で8bit階調の映像を投影する高速プロジェクタ

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プロジェクションマッピング,デジタルサイネージ,ユーザインタフェース,AR(Augmented Reality)等の分野において,実世界の物体へ映像を投影するプロジェクタ技術の重要性が高まっている.一方,ロボットなどの産業応用においても,プロジェクタから対象に映像を投影してカメラで捉える画像センシングシステムの開発が進んでいる.ところが,従来のプロジェクタは,スクリーン等の静止した対象物体への投影を前提としており,画質面では優れているものの,フレームレートは,30fps~120fpsのものが主流で,上記のような応用には十分ではなかった.このような問題の解決に向けて,新たな高速プロジェクタの実用試作機DynaFlashを開発した.DynaFlashは,8bit階調の映像を最大1,000fpsのフレームレート・最小3msの遅延で投影することができる.

1. 8bit階調の映像を最大1,000fpsで投影
今回開発した高速プロジェクタは,DMDチップ(Digital Micromirror Device)と高輝度LED光源を用い,最大1,000fpsで8bit階調の映像を,最小遅延3msで投影するものである.FPGAに組み込んだ高速制御回路を新たに開発し,これを用いてDMDとLEDを高速に制御することで,高いフレームレートを実現している.さらに,独自の通信インタフェースによって,画像を高速転送する回路を計算機に搭載することで,映像生成から投影までの遅延を最小3msにまで抑えることができる.

2. 高速プロジェクタと高速ビジョンの連携で新たな応用 従来から開発してきた高速ビジョン技術を組み合わせることで新たな応用展開を目指している.この高速プロジェクタの応用例として,高速で移動する対象物へのプロジェクションマッピングシステムを試作した.このシステムは,高速ビジョンにより対象物の位置を認識し,その対象物に対して遅れなく映像を投影するものである.従来のディスプレイでは,運動の速度に対してディスプレイの速度が不足しているため,大きなずれを生じていた.これに対し,今回のシステムでは高速処理を実現することにより,ずれのない映像を表示することができる.さらに高速ビジョンと連携することで人間の眼には知覚できないmsオーダーでのセンシング,特に3次元計測を飛躍的に高速化することも可能となる.


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参考文献

  • Yoshihiro Watanabe, Gaku Narita, Sho Tatsuno, Takeshi Yuasa, Kiwamu Sumino, Masatoshi Ishikawa: High-speed 8-bit Image Projector at 1,000 fps with 3 ms Delay, The International Display Workshops (IDW2015), (Shiga, Japan, 2015.12.11)/Proceedings, pp.1064-1065, 2015. Best Paper Award
  • 成田岳, 江連悠貴, 湯浅剛, 角野究, 渡辺義浩, 石川正俊: 1000fps・8bit 階調と低レイテンシ投影を実現する高速プロジェクタの開発, 第20回日本バーチャルリアリティ学会大会(VRSJ2015), 13B-1, pp.162-165