高速なDynamic Facial Projection Mapping（DFPM）は，顔の形や表情に整合するように投影像を重ね合わせ，外見を知覚的に変化させる技術である．しかし，DFPMはセンシングから投影までのわずかな遅延によって，実体の顔と投影像がずれることで，没入感が低下する問題を抱えている．しかし，我々の知る限りでは，DFPMにおける知覚的な投影ずれを回避するための遅延要件を確立した先行研究はない．
本研究では，顔の異なる動きの条件下で，DFPMにおける知覚遅延のJust-Noticeable Difference（JND）を被験者実験を介して調査した．特に今回は，コンピュータグラフィックスによって高いリアリティのDFPMの動画を生成し，被験者に提示することで，実験の再現性を確保した．また，高速なプロジェクタを用いることで，正確な動きと遅延を制御できる実験環境を構築した．
結果として，顔の動きの種類とその速度によって，知覚される位置ずれが異なることを示した．また，顔の移動速度が0.5 m/sの場合，知覚可能な位置ずれを回避するためには，平均3.87 msの遅延が必要であることを示した．この結果より，これまでのDynamic Projection Mappingで主流となっていた遅延要件よりも短いことが分かった．
参考文献
- Hao-Lun Peng, Shin'ya Nishida and Yoshihiro Watanabe: Studying User Perceptible Misalignment in Simulated Dynamic Facial Projection Mapping, IEEE International Symposium on Mixed and Augmented Reality (ISMAR), 2023.