Mixed Light Fieldを用いた明るい環境と高いコントラストを両立するプロジェクションマッピング

Projection Mapping with a Brightly Lit Surrounding Using a Mixed Light Field Approach
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プロジェクションマッピングは,照明で照らした明るい環境において,十分な性能を発揮することができなかった.これは照明の光が周囲の環境だけでなく,投影対象も照らすことで,マッピングのための映像のコントラストが低下するためである.

このような事態を避けるため,プロジェクションマッピングでは照明を利用しない構成が一般的であった.結果として,投影された映像は綺麗に見えるが,暗い環境の下で,マッピング対象のみが明るい不自然な外観となっていた.また,マッピング対象以外の物体が暗闇で見えない点も,応用展開を制限する要因となっていた.このような背景の下,照明下の明るい環境に,プロジェクションマッピングによって外観操作された対象が共存する拡張現実の実現は,新たな目標として注目されている.




本研究では,通常のプロジェクションマッピングと光線制御可能な照明を組み合わせる手法 "Mixed light field"を提案する.通常の照明は,環境全体の明るさを調整する自由度しかないが,本照明はさまざまな方向に飛ぶ多数の光線を1本ずつ独立に調光することができる.本手法では,この照明を用いて,プロジェクションマッピングの対象に届く光線をその形に合わせて正確に消灯する.さらに,それ以外の光線を点灯させることで,投影対象だけに照明が当たらず,周囲の環境は自然で明るい状態を再現することができる.この構成下で,投影対象に通常のプロジェクションマッピングを適用すれば,明るい自然な環境を作り出しつつ,高いコントラストでマッピングによる外観操作を実現することができる.



特に,このような照明において制御可能な光線の密度を上げるために,レンズアレイとミラーアレイを統合する照明光学系を提案した.これは,レンズアレイによって生成された光線分布の密度を,万華鏡のような合わせ鏡による複数回反射によって,さらに高める手法である.これによって,さまざまな姿勢や形の対象に対して,その表面に届く光だけを正確にカットすることができる.

また,投影対象の表面全体ではなく,その一部だけに照明の光を当てない応用も可能である.さらに,光線制御可能な照明は,拡散光の照明から点光源の照明などさまざまな再現が可能であることを示した.これによって,プロジェクションマッピングによる仮想の外観変化と整合する形で,周囲の環境の照明も自由に変えることができる.




本提案技術によって,プロジェクションマッピングされた対象と通常の物体を,明るい環境の下で,違和感なく自然に共存させることができる.その結果として,日常的なシーンにプロジェクションマッピングが溶け込んだ世界を創り出すことができると考えられる.例えば,舞台制作やアトラクションの体験向上,衣服や製品のデザイン支援,情報提示による教育支援,化粧の試着,製造業や医療操作の作業支援など,さまざまな社会応用において,視覚的体験の質を高め,創造性や効率性の向上に貢献することが期待される.


参考文献

  • Masahiko Yasui, Ryota Iwataki, Masatoshi Ishikawa, and Yoshihiro Watanabe: Projection Mapping with a Brightly Lit Surrounding Using a Mixed Light Field Approach, IEEE Transactions on Visualization and Computer Graphics (IEEE VR 2024), DOI: 10.1109/TVCG.2024.3372132 (2024)