高速プロジェクタを用いたマルチパターン埋め込み位相シフト法に基づく高速3次元計測

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近年,運動物体に対する3次元計測の重要性が様々な分野で高まっている. 運動物体の計測にはパターン光投影を用いた構造化光法に基づく計測が有効であることが知られている. 本研究では,構造化光法の1つである位相シフト法と呼ばれる手法に基づき,運動物体に対する高速かつ高精度な3次元計測の実現を目指す.

位相シフト法は,構造化光を用いるマルチショット型の手法の中でも少ない投影枚数で高精度かつ高解像度な計測が可能である. しかし,多階調パターンの投影が必要なためプロジェクタの投影速度がボトルネックとなり高速な計測が難しい. また,正弦波の周期の曖昧さを除去するために位相接続と呼ばれる処理が必要であり, 従来はこの処理のためにさらに複数枚のパターン投影を行っていたため,運動物体に対する計測精度が低下するという問題があった.

そこで,高速プロジェクタを用いてパターン投影を行い,先述した1つ目の問題点を解決する. このプロジェクタは,1000fpsで8bit階調の映像を投影可能であるため,高速な3次元計測が可能となる. その上で,パターンの埋込により投影枚数を3枚に抑えて位相接続を行い,位相接続に伴うパターンの投影枚数の増加を抑制する. この手法では,2種類のパターンを投影画像の異なるビットに埋め込むとともに,それらを2台のカメラで同期撮像することで計測を行う. 以上により,先述した2つ目の問題点を解決することができる.

なお,本手法では,正確な位相接続のために2種類のパターンを撮像する2台のカメラの光軸が一致している必要がある. そこで,2台のカメラの同軸精度の向上による更なる計測の高精度化を目的として,新たに6軸調整機構を備えた同軸ユニットを導入した計測システムを開発した. また,本システムに特化したノイズ低減手法を提案する.

今回は運動物体の計測の定量評価実験を行い,グレイコードパターンを100µs間に埋め込むことで, 約30-50cm/sで運動する対象に対しても速度500fps,平均誤差1mm以下での計測が可能であることを示した. また,投影撮像速度500fps,処理時間3000fpsでのリアルタイム計測を実現した.

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参考文献

  • 久一 空,野元 貴史,田畑 智志,渡辺 義浩: マルチパターン埋め込み型位相シフト法に基づく高速3次元計測の開発,第26回画像センシングシンポジウム,IS3-35,2020.
  • 久一 空,田畑 智志,渡辺 義浩: マルチパターン埋込型位相シフト法に基づく高速3次元計測の高精度化,2019年映像情報メディア学会冬季大会,21C-2,2019.
  • M. Maruyama, S. Tabata, Y. Watanabe, and M. Ishikawa, “Multi-pattern embedded phase shifting using a high-speed projector for fast and accurate dynamic 3D measurement,” IEEE Winter Conference on Applications of Computer Vision, pp.921–929, 2018.