BFS-Auto: 高速・高精細書籍電子化システム

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書籍電子化の超高速化に向けて,新しい方式 ブックフリッピングスキャニング(Book Flipping Scanning)が提案された.これは,本をパラパラめくるだけで全ページを画像として保存できるものである.この方式を具現化するシステムとして,新たにBFS-Autoを開発した.本システムは,機械による高速ページめくりと,リアルタイムで実行される書籍の3次元状態認識技術,さらに高速のゆがみ補正アルゴリズムを導入することにより,冊子体のままで,電子書籍の要求解像度での高速スキャンを実現したものである.

1. 1分間に250ページの高速ページめくり機能を搭載: Book Flipping Scanningの構想は,書籍電子化速度の大幅な向上を可能とするが,自動化に向けてめくり機の性能不足が問題であった.これまでの自動めくり機は同構想が目指す速度に対して十分な性能を備えていなかった.そこで,独自の高速書籍自動めくり機を新たに開発した.設計では,ページめくりの機構が撮像の邪魔にならないように設計することが重要な鍵となる.結果として,このブックスキャナーでは,冊子体を裁断することなく,1分間に250ページの高速スキャンを実現している.つまり,250ページ程度の本であれば,1冊を1分で電子化することができる.

2. 超高速の3次元状態認識によって高速かつ高品質な電子化を実現: 本システムでは,ページをめくるときに生じる紙面の3次元形状を1秒間に500回の速度で捉え,最も高品質に電子化できる瞬間を,新たに開発した独自のアルゴリズムに基づいて,リアルタイムに識別している.この識別された瞬間に高精細カメラによる撮像を行うことで,高速かつ高精細な電子化を実現可能とした.これにより,解像度を1インチあたり400画素まで高めることに成功し,電子書籍での利用が可能となった.この技術によって,独自に開発した高速ページめくり装置の速度でも,すべてのページを見逃すことなく,高精細で高品質な電子化が可能である.

3. リアルタイムでの書籍画像の3次元補正を実現: 本システムは,撮像された画像と同時に取得した3次元形状を用いて,変形する前の平面の書籍画像に復元する独自の補正技術を備えている.3次元の形状を用いているため,ページに印刷されたコンテンツに依存せずに補正を行うことができる.今回,本処理の効率化と並列化を図り,撮像と同時に補正できるシステムを開発した.左図では,補正前と補正後の結果を示している.


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参考文献

  • Shohei Noguchi, Masahiro Yamada, Yoshihiro Watanabe and Masatoshi Ishikawa: Real-time 3D Page Tracking and Book Status Recognition for High-speed Book Digitization based on Adaptive Capturing, IEEE Winter Conference on Applications of Computer Vision 2014, 2014. Best Paper Award
  • 野口翔平,溜井美帆,山田雅宏,渡辺義浩,石川正俊:自動めくり機を搭載する適応的撮像型の高速書籍電子化システム,電子情報通信学会論文誌D,Vol.J96-D,No.10,pp.2590-2602,2013. [link]
  • 山田雅宏,渡辺義浩,石川正俊: 世界最速ブックスキャナの開発,日本印刷学会誌,Vol. 50, No. 3, pp.267-271, 2013.
  • 野口翔平,溜井美帆,山田雅宏,渡辺義浩,石川正俊:適応的撮像に基づく自動・高速・高精細書籍電子化システムの開発と評価,ロボティクス・メカトロニクス講演会2013 (ROBOMEC2013)(つくば,2013.5.24)/講演会論文集,2A2-J03.ROBOMEC表彰,若手優秀講演フェロー賞
  • 野口翔平,溜井美帆,山田雅宏,渡辺義浩,石川正俊:適応的撮像による書籍電子化のためのリアルタイムページ3次元トラッキングとその状態評価,パターン認識・メディア理解研究会(PRMU2012-188)(東 京,2013.3.15)/信学技報,vol.112,no.495,pp.49-54.
  • 野口翔平,溜井美帆,山田雅宏,渡辺義浩,石川正俊:自動めくり機を搭載する適応的撮像型の高速書籍電子化システム,ビジョン技術の実利用ワークショップ(ViEW2012)(横浜, 2012.12.7)/講演論文集,IS2-D2.
  • 山田雅宏, 渡辺義浩, 石川正俊: 世界最速ブックスキャナ, 日本印刷学会 第128回 秋期研究発表会 (大阪, 2012.11.9) / 講演予稿集, pp.39-42. 技術奨励賞, 研究発表奨励賞

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