
投影対象へ当たる光線を消灯し,周辺のみに光を当てるように光線制御した照明を利用することで,高コントラストなプロジェクションマッピングと明るい周辺環境を両立できる.しかし,従来手法では照射する光線の決定に時間を要するため,投影対象が静止物体に限定される問題があった.そこで,高速処理が可能なレイトレーシングを用いた照明の光線制御手法を提案し,動的な投影対象に向けた光線制御の速度性能を検証する.一方,レイトレーシングの計算に使用する光線は,実際の光線の振る舞いを完全に再現していないため,誤って対象に当たる迷光が発生する.そこで,誤って対象に当たる迷光を低減するため,1 画素の計算に複数本の光線を用いる手法を提案する.実験では,動的対象への光線制御を実行し,ダイナミックプロジェクションマッピングに向けて十分な速度性能を確認した.また,迷光低減手法を適用する場合としない場合での比較実験により,迷光低減手法により迷光を低減できることを確認した.さらに,提案手法を用いて明環境下でのダイナミックプロジェクションマッピングを行うシステムを構築した.実験では,ダイナミックプロジェクションマッピングと動的対象へ追従した照明の光線制御が可能であることを確認した.



参考文献
- 岩瀧良太,渡辺義浩:レイトレーシングを用いた照明の光線制御における迷光の低減に関する検証,第75回複合現実感研究会,MR2025-2,2025.
- 岩瀧良太,渡辺義浩:ダイナミックプロジェクションマッピングのための照明の高速な光線制御に関する検証,第29回バーチャルリアリティ学会大会,2B2-07,2024.